膝関節の機能解剖②〜変形性膝関節症〜
前回に引き続き膝関節についてお話しします。
今回は変形性膝関節症、特にO脚(内反膝)についてのお話です。
膝関節の基本的な構造に関しては
膝関節の機能解剖①
を先にお読みください。
変形性膝関節症の病態
関節軟骨の変性を基盤に軟骨面が摩耗して、最終的には軟骨下骨露出に至るもの。半月板の変性や膝関節周囲筋力低下などが変形性膝関節症の進行に影響しています。
主に女性に好発し、60歳代女性に40%、70歳代女性に70%に画像上変形を認めます(2014年)
発症の危険因子としては、肥満、加齢、女性、外傷の既往などが挙げられています。
なぜO脚になりやすいのか?
大きく分けると①大腿脛骨関節の内側面安定性、②ミクリッツ線の通過位置、③加齢に伴う骨盤後傾が挙げられます。
①大腿脛骨関節の内側面安定性
1.脛骨関節面の内側顆安定性
脛骨関節面は内側が凹面、外側が凸面となっており、内側面での荷重が安定しやすい構造となっています。
2.半月板の可動性による安定性
内側半月板は内側側副靱帯(正確には後斜靭帯と内側関節包靭帯)に連結しています。その為内側半月板の可動性は小さく、荷重安定性が高くなっています。
内側面の安定性が高く、荷重しやすいため、内側の軟骨が摩耗しやすくなっています。
②ミクリッツ線の通過位置
ミクリッツ線は下肢機能軸とも呼ばれ、立位時の下肢荷重線と相当します。以下の研究で、健常成人の片脚立位時に、脛骨外顆から平均67.3±7.5%の位置と述べており、膝関節には常時内反ストレスがかかっていると考えられます。
ミクリッツ線が膝関節内側に偏移しやすい為、大腿脛骨関節内側に荷重しやすくなり、内側の軟骨が摩耗しやすくなっています。
③加齢に伴う骨盤後傾
加齢に伴う円背姿勢や股関節伸展筋の筋力低下などにより骨盤が後傾しやすくなります。骨盤が後傾することで、下行性運動連鎖から
膝関節:屈曲・内反・内旋
が生じます。
膝関節に内反ストレスが生じることで、大腿脛骨関節内側の圧が高まり、内側の軟骨が摩耗しやすくなります。
O脚の評価すべきポイント
基本的な膝関節周囲の筋力、可動域(角度)などは省略しています。
①Kellgren Lawrence(KL)分類
膝関節の可動域と負の相関(グレードが高いほど可動域低下)あり。
また、足底板はKL分類グレード3までは有意に内反モーメントを抑制したが、グレード4では効果は少ない。
②膝関節可動域
屈曲・伸展、下腿の内旋への影響因子を評価します。
1.膝蓋骨の可動性
膝蓋骨は膝関節伸展時に頭側、屈曲時に尾側に移動します。
【膝蓋上嚢】
TKA術後など、癒着しやすい。癒着することで膝蓋骨尾側方向への移動を阻害する。内側広筋との連結あり。
【膝蓋下脂肪体】
柔軟性の低下で膝蓋骨頭側への移動を阻害する。膝関節屈曲時には脂肪体が関節内に移動する為、モビライゼーションを行う際には膝関節伸展位で行う。
2.下腿の内旋
O脚では、内側広筋・中臀筋などの筋力低下を生じる。代償として大腿筋膜張筋・外側広筋・大腿二頭筋などの過収縮傾向となる。下腿外旋筋の緊張が高くなる為、膝関節屈曲時の下腿内旋が制限されやすい。
3.膝関節の転がり滑り
膝関節屈曲・伸展時には0〜20°は転がり、20°以降は滑りが加わる。深屈曲時には滑りのみとなる。
③膝関節周囲筋の協調性
1.膝関節伸展時の内・外側広筋
外側広筋優位となりやすい為、内側広筋が協調的に収縮されているか。
2.膝関節屈曲時の内・外側ハムストリングス
外側ハムストリングス優位となりやすい為、内側ハムストリングスか協調的に収縮されているか。
3.中臀筋
筋力低下しやすい為CKCでの収縮がされているか。
参考文献
4.変形性膝関節症において可動域に影響を与える危険因子についての検討