膝蓋骨の可動性について
膝蓋骨の可動性は膝関節の可動域低下につながります。
また、膝蓋骨可動性向上により、大腿四頭筋による膝関節伸展筋力が向上すると報告されています。
そのため、膝関節周囲の疾患では早期から膝蓋骨の可動性評価も必要になります。
今回は膝蓋上嚢と膝蓋下脂肪体についてご説明します。
膝蓋骨の位置について
正常の膝蓋骨の位置は、おおよそ膝関節関節裂隙の高さに膝蓋骨下端があります。
膝蓋骨が正常より尾側(低位)にある場合は膝蓋下脂肪体が
膝蓋骨が正常より頭側(高位)にある場合は膝蓋上嚢が
影響している可能性があります。
膝蓋下脂肪体のモビライゼーション
膝蓋下脂肪体は膝関節屈曲位で、関節内に入り込んでしまいます。膝蓋下脂肪体のモビライゼーションを行う場合は膝関節伸展位で行なってください。
【方法】
1.膝関節伸展位で、片手で膝蓋骨を固定
2.膝蓋下脂肪体を把持し、左右に動かす
膝蓋上嚢のモビライゼーション
膝蓋上嚢は内側広筋との連結もあり、早期から大腿四頭筋の収縮を行うことで癒着予防につながります。
徒手的に癒着を取り除く場合は以下の操作を行ってください。
【方法】
1.膝蓋骨上部の軟部組織を挟むように把持する
2.把持したまま軟部組織を持ち上げる
備考
膝蓋骨の評価すべきことは、まだまだありますが、需要があれば記事を書かせていただきます😊
膝関節の機能解剖②〜変形性膝関節症〜
前回に引き続き膝関節についてお話しします。
今回は変形性膝関節症、特にO脚(内反膝)についてのお話です。
膝関節の基本的な構造に関しては
膝関節の機能解剖①
を先にお読みください。
変形性膝関節症の病態
関節軟骨の変性を基盤に軟骨面が摩耗して、最終的には軟骨下骨露出に至るもの。半月板の変性や膝関節周囲筋力低下などが変形性膝関節症の進行に影響しています。
主に女性に好発し、60歳代女性に40%、70歳代女性に70%に画像上変形を認めます(2014年)
発症の危険因子としては、肥満、加齢、女性、外傷の既往などが挙げられています。
なぜO脚になりやすいのか?
大きく分けると①大腿脛骨関節の内側面安定性、②ミクリッツ線の通過位置、③加齢に伴う骨盤後傾が挙げられます。
①大腿脛骨関節の内側面安定性
1.脛骨関節面の内側顆安定性
脛骨関節面は内側が凹面、外側が凸面となっており、内側面での荷重が安定しやすい構造となっています。
2.半月板の可動性による安定性
内側半月板は内側側副靱帯(正確には後斜靭帯と内側関節包靭帯)に連結しています。その為内側半月板の可動性は小さく、荷重安定性が高くなっています。
内側面の安定性が高く、荷重しやすいため、内側の軟骨が摩耗しやすくなっています。
②ミクリッツ線の通過位置
ミクリッツ線は下肢機能軸とも呼ばれ、立位時の下肢荷重線と相当します。以下の研究で、健常成人の片脚立位時に、脛骨外顆から平均67.3±7.5%の位置と述べており、膝関節には常時内反ストレスがかかっていると考えられます。
ミクリッツ線が膝関節内側に偏移しやすい為、大腿脛骨関節内側に荷重しやすくなり、内側の軟骨が摩耗しやすくなっています。
③加齢に伴う骨盤後傾
加齢に伴う円背姿勢や股関節伸展筋の筋力低下などにより骨盤が後傾しやすくなります。骨盤が後傾することで、下行性運動連鎖から
膝関節:屈曲・内反・内旋
が生じます。
膝関節に内反ストレスが生じることで、大腿脛骨関節内側の圧が高まり、内側の軟骨が摩耗しやすくなります。
O脚の評価すべきポイント
基本的な膝関節周囲の筋力、可動域(角度)などは省略しています。
①Kellgren Lawrence(KL)分類
膝関節の可動域と負の相関(グレードが高いほど可動域低下)あり。
また、足底板はKL分類グレード3までは有意に内反モーメントを抑制したが、グレード4では効果は少ない。
②膝関節可動域
屈曲・伸展、下腿の内旋への影響因子を評価します。
1.膝蓋骨の可動性
膝蓋骨は膝関節伸展時に頭側、屈曲時に尾側に移動します。
【膝蓋上嚢】
TKA術後など、癒着しやすい。癒着することで膝蓋骨尾側方向への移動を阻害する。内側広筋との連結あり。
【膝蓋下脂肪体】
柔軟性の低下で膝蓋骨頭側への移動を阻害する。膝関節屈曲時には脂肪体が関節内に移動する為、モビライゼーションを行う際には膝関節伸展位で行う。
2.下腿の内旋
O脚では、内側広筋・中臀筋などの筋力低下を生じる。代償として大腿筋膜張筋・外側広筋・大腿二頭筋などの過収縮傾向となる。下腿外旋筋の緊張が高くなる為、膝関節屈曲時の下腿内旋が制限されやすい。
3.膝関節の転がり滑り
膝関節屈曲・伸展時には0〜20°は転がり、20°以降は滑りが加わる。深屈曲時には滑りのみとなる。
③膝関節周囲筋の協調性
1.膝関節伸展時の内・外側広筋
外側広筋優位となりやすい為、内側広筋が協調的に収縮されているか。
2.膝関節屈曲時の内・外側ハムストリングス
外側ハムストリングス優位となりやすい為、内側ハムストリングスか協調的に収縮されているか。
3.中臀筋
筋力低下しやすい為CKCでの収縮がされているか。
参考文献
4.変形性膝関節症において可動域に影響を与える危険因子についての検討
膝関節の機能解剖①
膝関節といえば、変形性膝関節症やACL(前十字靭帯)損傷など、よく臨床上で触れる関節です。股関節と足関節の中間関節でもあり、膝関節の安定性は非常に重要です。
今回は基本的な機能解剖について紹介していきます。
膝関節の構造
[フリーメディカルイラスト図鑑の画像を使用]
膝関節は大腿骨-脛骨からなる大腿脛骨関節と大腿骨-膝蓋骨からなる膝蓋大腿関節で構成されています。また、脛骨の外側には腓骨が寄り添うように存在します。骨と筋だけでは、安定しないため、靭帯によって前後左右に安定させています。
脛骨関節面は内側が凹面、外側が凸面をしています。構造上から内側面の方が荷重安定性が高くなっています。
大腿脛骨関節には軟骨や半月板がありクッションの役割をしています。
関節部分は関節包(外側が線維膜、内側が滑膜)に包まれており、滑膜からは潤滑油の役割を持つ滑液が分泌され、関節腔を満たしています。
蝶番関節に近い機能を持ちますが、構造上は顆状関節に分類されます。
膝関節の可動方向
・屈曲:参考可動域130°
(正座には約140〜150°必要)
・伸展:参考可動域0°
・下腿内旋:約10°
・下腿外旋:約20°
※内旋、外旋に関しては「関節可動域表示ならびに測定法」に記載されていないので、↓研究結果より引用。
死体膝では、膝関節屈曲120°で下腿内旋約8°、屈曲150°で約11°と報告しており、内外旋可動域には諸説ある様子。
脛骨大腿関節屈曲における下腿内旋運動の影響−変形性膝関節症との関連−
膝関節屈伸時には、転がりと滑りが生じます。屈曲0°〜20°付近は、主に転がりのみ。深屈曲時は滑りのみとなります。
半月板
半月板は大腿脛骨関節の間に存在し、関節に加わる体重の分散と関節の安定化に働きます。
内側半月板はC字型、外側半月板はO字型をしています。内側半月板は内側側副靱帯(後斜靭帯と内側関節包靭帯)と連結しているため、外側半月板と比較すると可動性は小さく、また内側半月板の方が関節面は大きくなっています。
半月板に対する血流は、外側1/3にはありますが、それ以外はありません。その為、自然治癒は乏しくなっています。
膝関節周囲の筋
【膝関節伸展に働く】
・大腿四頭筋 ・大腿筋膜張筋
【膝関節屈曲に働く】
・大腿二頭筋 ・半腱様筋 ・半膜様筋 ・縫工筋
・薄筋 ・膝窩筋 ・腓腹筋 ・足底筋
【下腿の内旋に働く】
・内側広筋 ・膝窩筋 ・縫工筋
・薄筋 ・半腱様筋 ・半膜様筋
【下腿の外旋に働く】
・外側広筋 ・大腿筋膜張筋 ・大腿二頭筋
膝関節周囲の靭帯と支持機構
・膝蓋靭帯
・前十字靭帯
・後十字靭帯
・内側支持機構
(半月後角、半膜様筋腱、内側側副靱帯:広義には後斜靭帯、内側関節包靭帯を含む)
・外側支持機構
(腸脛靭帯、大腿二頭筋腱、膝蓋支帯、膝蓋大腿靭帯、外側側副靱帯)
・後外側支持機構
(外側側副靱帯、膝窩筋腱、膝窩腓骨靭帯)
参考文献
2.脛骨大腿関節屈曲における下腿内旋運動の影響−変形性膝関節症との関連−
3.膝関節の運動
6.膝関節と運動療法
次回の膝関節に関する記事は、変形性膝関節症の内容を入れながらかけたらと思います。
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筋肉紹介〜大臀筋〜
今回は筋肉についてご紹介します。
この記事では大臀筋について触れていきますが、リハビリを目指す学生時代には習わない事もあるので、少しでも知識のお役に立てたらと思います。
記事を書くにあたって参考にした論文等は記事最後にまとめておくので、気になる方は参考にしてください!
そもそも大臀筋とは?
大臀筋は臀部表層に位置する筋肉で、単一筋としては人体で最大の体積を有する。表層かつ体積も大きい筋肉であるため、大臀筋の筋ボリュームによって外見的な見栄えにも影響してきます。また、大腿四頭筋と並んで、鍛える事で基礎代謝も大きく向上します。
[フリーメディカルイラスト図鑑の画像を使用]
大臀筋の医学的情報
【支配神経】
下臀神経(L4-S2)
【起始】
浅部:腸骨稜、上後腸骨棘、仙骨、尾骨
深部:腸骨翼の殿筋面、仙結節靭帯
【停止】
上部:大腿筋膜の外側部で腸脛靭帯に移行
下部:大腿骨の殿筋粗面
【作用】
股関節伸展、外旋
上部:外転、内旋(股関節90°屈曲位)
下部:内転
学生レベルでは股関節伸展・外旋の作用のみで知識としては十分ですが、臨床では、プラスして上部・下部繊維の走行の違いから外転・内転作用がある事も重要です。また、股関節90°屈曲位では上部繊維は内旋作用となります。その為、股関節90°屈曲位での股関節外旋制限は上部繊維の影響も考慮する必要があります。
股関節伸展作用は股関節伸展0°〜10or15°で筋出力が増大します。
【筋繊維比率】
遅筋47.6
速筋52.4
【筋連結】
起始部:広背筋、最長筋、多裂筋、対側大臀筋、同側中臀筋
停止部:大腿筋膜張筋、大腿二頭筋、外側広筋、小内転筋、大内転筋
歩行時の筋活動
[基本的動作における大臀筋上部繊維と下部繊維の筋活動についてより引用]
大臀筋上部繊維は主に立脚初期〜中期での筋活動が大きく、中臀筋と同様に股関節の外転作用にて骨盤の安定化にも働きます。立脚中期の踵離地にかけて筋活動は徐々に漸減していきます。
大臀筋下部繊維は立脚初期直前から筋活動が開始し、足底接地までに筋活動が最大となります。大臀筋下部繊維は、立脚初期の骨盤前傾に伴う股関節の屈曲を制動するために関与しますが、純粋な股関節伸展への関与は少ないです。
大臀筋収縮不全による異常歩行
【大臀筋歩行】
体幹を後傾させ、床反力作用線を股関節より後方に通す事で、大臀筋の筋力を使用せずに歩行します。
【立脚初期以降の体幹前傾と股関節屈曲】
立脚初期以降の慣性力による体幹前傾と股関節屈曲モーメントを制動できずに、体幹前傾と股関節屈曲方向に崩れていきます。
大臀筋による仙腸関節の安定化
緑丸の部分が仙腸関節になります。大臀筋は筋の走行から、骨盤に対して水平方向へのベクトルも有しています。仙骨に対して腸骨を押し付けるような力が働くため、仙腸関節の安定化ににつながります。
大臀筋の収縮不全により仙腸関節の安定性が低下し、立脚期中継続した腸骨の後傾負荷が生じ、仙骨との適合不全が生じます。収縮不全が生じている側はハムストリングスの活動が著明に亢進しています。また、腸骨の後傾負荷に対抗するため、同側の脊柱起立筋の緊張を高めてる場合もあり、その場合は脊柱起立筋に圧痛所見が見られる事もあります。
参考文献
1.基本動作における大臀筋上部繊維と下部繊維の筋活動について
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素人による絵が上達するための模写
今回は少し話は変わりますが、昔趣味でやってた模写についてお話しします😊
※あくまで素人がやってる、素人でもそれなりにできる模写です。使用道具はシャーペンと消しゴムのみ。
模写は絵を練習する上で、多くの方がやったことあると思います。模写を繰り返すことで、絵は上達してくるのですが、意味のない模写を行なっていると絵はなかなか上達してきません。そこで、私が昔に取り入れた、当たり前の技法…それでいて重要なことを紹介します。
まず最初にこちらをご覧ください
今から約3年半前特になんの知識もなく書いたAngel Beats立花奏の模写です。雑というのもあるんですが、顔の位置や輪郭、髪の位置などが、常に想定した場所とずれてくるため、違和感だらけの模写となりました。
次にこちらをご覧ください。
当ブログのトプ画にもなっている、問題児が異世界から来るそうですよ?黒うさぎの模写です。(少し明るさ調整してます)
この時にはある一つの技法(模写や絵を描く人にとっては当たり前の事)を取り入れて書いたものです。ちなみに書いたのは立花奏を描いてから1、2ヶ月程度です。
この時に取り入れた技法は「アタリ」と言われています。
「アタリ」とは、大まかに全体の位置関係を、描くというものです。
例えば、頭の幅は肩から見てどの辺までなのか、手首の位置はどの高さ(肩・腰・脚)など、位置関係を明確にしていきます。
実際に私のアタリが↓になります。
ここで全体像を大まかに把握します。画像は少し詳細に描きすぎていますが、もっと簡略化した輪郭だけで問題ありません。この後に肉付けしていく作業に入ります。
肉付けしていく際に、僅かな誤差は生じてきますが、最初に位置関係をとっていることで、修正が容易になります。
肉付けができてくると、着色に移っていきます。
私はこのようにして模写を行なっていました😊
あくまで素人のやり方なので、プロを目指している方にはあまり役に立たないと思います。しかし、「アタリ」をとることで、趣味で描くレベルであれば、私の立花奏の模写から1、2ヶ月で黒うさぎの模写程度までは上達することができました。
絵を練習してる方で、模写がうまくいかない人は「アタリ」をとることから始めてみてはどうでしょうか?😊